短編小説 シリーズ短編 アンラッキーのナナ

アンラッキーのナナ

〜 全部、ナナが悪いの? 〜

46 行 2026/06/21 09:45
 今日も、学校で”いじめ”られたと、一人の女の子が泣いている。  女の子を気にしているのは、施設の職員や兄や姉だけではない。本屋の老夫婦も気にしている。少女が抱きしめているぬいぐるみも慰める役割を持っている。涙で重くなったぬいぐるみを見るたびに、少女が何をしたのかと”問いたい”気持ちになっている。 「ねぇ筋肉。ナナは、そんなにダメなの?」  名前が筋肉になってしまっている職員に問いかける|少女《ナナ》。  ダメじゃないと答えるのは簡単だ。でも、その簡単な答えが少女に告げられない。 「ナナが全部、パパとママが死んじゃったのも、ペロが死んだのも、全部ナナが悪いの?」 「違う。ナナは、悪くない!」 「だって、先生が・・・。ナナがしっかりしないからだって・・・。全部、ナナが悪いから・・・」  少女は言いかけて、言葉を詰まらせた。両親が目の前で死んでしまった姿を思い出した。  酷く辛く哀しい。  ”ゲームソフトが欲しい”という理由で、少女の両親は殺された。万引きを注意して殴られた。そして、ナイフで刺されてしまった。 「ナナ」  少女の問いかけは、誰かに向かって聞いているわけではない。少女は、自分が”|不運《アンラッキー》”だとは思っていない。|運《ラッキー》・|不運《アンラッキー》で、両親を殺されたくない。イジメられたくない。ペロを殺されたくない。  少女をイジメている子供たちが、金持ちの子供でラッキーと口癖のように言っているのを聞いて、少女は強く、自分が”|不運《アンラッキー》”だとは考えたくない。 「大丈夫。パパとママは、正しい事をしたのだよね」 「そうだ」  少女は、今日もぬいぐるみを抱きしめて眠っている。  |職員《筋肉と呼ばれた》は、何も罪もない壁に罰を与えている。そして、自分の不甲斐なさを悔やんでいる。 「手を痛めますよ」 「・・・。そうですね」  壁を殴っていた職員は、止めた職員を見てから、手を止めた。 「なぜ、ナナなのでしょうか?」  職員の呟きには沈黙だけが返された。誰にも答えられない。  少女が今まで味わった|不運《アンラッキー》の数だけ幸せになる権利が与えられている。職員だけではなく、皆が信じて・・・。祈っている。  少女がぬいぐるみを抱きしめながら眠る部屋には、両親から貰った名前を示す「|幸七《さちな》」と書かれた札が掛けられている。

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