町の小さな本屋

〜 届いた本 〜

68 行 2026/06/21 09:43
 僕の借りた部屋の近くに本屋がある。老夫婦がやっている小さな本屋だ。  僕は、その本屋に行くのが好きだ。  帰りに立ち寄って、本を物色する。  既に、本の位置を覚えてしまっている。それほど、本の入れ替えは少ない。  でも、綺麗に本が並べられている。掃除が行き届いているのか、凄く綺麗になっている。 「おや?今日も来たいのかい?」  今日の店番は、奥さんの方だ。 「はい。こんにちは」  雑談をしてから、今日発売の週刊誌を購入する。 「ありがとう」  僕は、初めて本屋で本の取り寄せを行う。 「取り寄せをお願いしたいのですが?」 「できるわよ。でも、大きな書店の方が早いし在庫があると思うわよ」  奥さんの言葉は正しいだろう。  でも、僕は”町の本屋”に頼みたい。 「重い本なので、近くでお願いしたいのです。ダメですか?」 「そういう理由なら・・・。でも、遅くなってしまうかもしれないわよ?」 「大丈夫です」  ISBNコードと書籍の名前を伝える。高額な本なので、”先に支払いたい”と伝える。 「時間を貰うかもしれないわね」 「3年後でも大丈夫です」 「そうなの?そんなには、かからないと思うわよ」  奥さんは笑いながら、前金を受け取ってくれた。  そして、注文書の控えを僕に渡してくれた。  奥さんの人柄がにじみ出るような文字だ。書店名や住所まで手書きだ。  領収書の住所は旦那さんの字なのだろうか?少しだけ癖のある文字だ。  翌日も、翌々日も、店によって、奥さんや旦那さんと言葉をかわす。  休日を挟んだ翌週から僕の楽しみは奪われた。  3か月の月日が流れた。 ”ピンポン”  僕の家に誰かが訪ねてきた。  ドアを開けると、どこか旦那さんの面影がある男性が立っていた。  僕に、綺麗に梱包された本を差し出してきた。  深々と頭を下げて、事情を教えてくれた。  梱包の上には、少しだけ癖のある字で、僕の名前が書かれていた。  店は閉店してしまった。老夫婦は、天国でも本屋を開いているのかな?

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